2016年の4月から奈良大学で大学生をやっていました。
奈良大学通信教育部文学部文化財歴史学科というところで、文化財学のコースを選択しました。いわゆる考古学を専攻したわけです。
その間のことをまとめてみました。
入学式 2016年4月2日。通学生と一緒。普通に見ればどう考えても付き添いのおっちゃん :-)
このときは、正直なところ卒業まで続けられるのかなぁという漠然として不安もありました。遠いということもありましたが、通信教育でいわゆる大学教育レベルの勉強ができるのかなんていう根本的な疑問もちょっと持っていたのでした。
科目はテキスト科目とスクーリング科目に別れています。テキスト科目は、指定された内容でのレポートを提出。これが合格になると、筆記試験に臨みます。
テキスト科目編
レポート
まずレポートは、2単位の科目で3200字、4単位だと6400字です。私の受けた科目ではすべて手書きでも、WordファイルでもOK。人によっては、何回も再提出になる人もいるようですが、私は三科目で再提出になりました。それぞれ、こんな事情でした。
書誌学: このころはMacで書いて、Wordファイルに変換していたんですが、変換がうまくいかずにフォーマットガタガタ。しかも、求められているものをうまく消化できてませんでした。
言語伝承論: こちらは、引用部分の数え方で見解があわなかったようで、事務室レベルで字数不足と言うことで再提出。元々削るのに苦労していた位なので、スクーリングで滞在中のホテルのPCでサクッと修正。
史料学概論: 史料について、五つのグループに分けて書くのですが、編纂物や古文書で頑張りすぎて、量的にも質的にもバランスが悪くて、再提出。結局この科目が、最後の最後まで残りました。
最初のゴールデンウイークあたりまでは、なかなかペースがつかめませんでした。まず一番興味があって、とっかかりやすい物からと言うことで「書誌学」を提出。続いてを6月になってから「文化財学購読1」を提出。(前述の通り、書誌学は再提出と相成りました)
一年目は、これ以外に「考古学概論」「美術史概論」「民俗学」「古文書学」「観光論」を提出して合格。二年目は「歴史文学論」「建築史」「言語伝承論」と提出。三年目には最後の年まで持ち越してしまった「史料学概論」を再提出。
レポートを書くにはテキストだけでは当然足りないので、資料となる本を買ったり、図書館で借りたりが多くなりました。
買うと言っても、勉強に関するものは、非常に絶版率が高いことに驚きました。古書類は、自分で持つのはあまり好きではなかったのですが、仕方ないのでネットやら神保町で猟書の日々。(古書って、なんだか元々持っていた人の執念、怨念みたいなものを感じたりするのが怖かったんですよ。)
地元の横浜市立図書館ではネットでの取り寄せを駆使、でもこれだけでは足りないので、母校青山学院大学の図書館を使うために卒業生としての利用登録をしました。ちゃんと貸し出しもしてくれるんで助かりました。 国会図書館もずいぶん利用しました、しかし本によってはちゃんと納本を指定ないものもあるようで、見つからない本があることに驚きました。そして、奈良大学の図書館では発掘報告書や中国、韓国の専門書など他所ではなかなか手に入らない資料を多く発見できました。
ちょっと面白かったのが、奈文研の資料室で沖縄の発掘レポートを見つけたこと。
試験
レポートが合格となると、試験を受ける権利が生まれます。こちらもなかなか大変。
問題は、事前に科目ごとに10問が示されています。そして、試験の時に何番の問題かが発表されて、解答するというもの。
つまり、ヤマをかけると言うことは基本ないんです。やらなきゃいけないものはわかってる。でもね、10問あるとよくわからない問題もあったりして、あぁX番だけは出ないでくれぇなんて気持ちにもなります。
解答案ができたら、今度はこれを覚えなきゃいけない。ちなみに解答用紙はA3サイズ。足りなかったら裏面の半分も使えます。これを「手書き」で埋めなきゃならない。内容を覚えるのはもちろん、漢字で書くところは漢字を覚える。普段の生活では手書きで一杯書くなんてことをしなくなってずいぶん経ちます。
人名も大変だし、書名やら地名やら普段絶対に書かないであろう漢字が次から次へ。問題によっては年号やら分析に関する数字も一杯。
何回も手書きでノートに書き写しました。この作業を通して解答案も練られていくんですが、たまに、「あれ、これじゃダメじゃん」みたいなことも起きます。そうなると、解答案を作り直し。
内容を覚えるために、繰り返し読み直しをしようとするんですが、10問分あると結構な作業でして、なかなか進まないんです。で、編み出したのが、iPhoneを使って読み上げさせるという手。
ある程度答えが固まったらメモアプリに入れて、読み上げさせて、ひたすら聞く。一時期は散歩に出て、ずっと聞いてました。10問あると、3,40分から1時間くらいかかります。よくやったなぁ。
試験はスクーリング期間中の夕方近くの時間帯でうけるか、地方で開催する試験日に受験します。私は、東京で数回、横浜で一回受験しました。
問題の番号は、本当にその場で示されるんですが、本当に何が出るかわかりません。地方会場だと一日五回あるんですが、時々朝から出た問題を調べてあって予想をしている人もいました。 たとえば、午前中に1,5と出たから、このあとは1と5は出ないとか。でも、同じ番号が繰り返して出されることは何度もありました。まぁ、当日になって絞られても、銅賞もないんですけどね。
スクーリングの時によく聞いたのが「古文書学」は難しくて、諦めた方が良いという話。実は、あまり苦労をしませんでした。ただ、教科書だけでは全然無理。元々古文書を読めるようになりたいなぁという気持ちもあったので、この機会に古文書講座的なもをのいくつか受講しました。メインは神奈川県立公文書館が主催しているもの。毎回抽選になるので、受講するのが難しいようなんですが、幸い2つのコースを続けて受講できました。ここでわかったのは、続けて数をこなさないと身につかないこと。まぁそれはそうだなぁって思います。そして、プロでも全部読めるわけじゃないってこと。考えたら当たり前ですが、書き手は上手ばかりじゃありません。下手な字も一杯あるし、間違ってることもこれまた多々ある。正式な文書とかならともかく、下書き、写し、個人的な記録類はかなりのくせ者。
スクーリング編
スクーリングは基本三日間。奈良大学は現場主義と言うことで古墳、寺社などへ出ることが多いのです。一級の解説者付きのツアーなので、とても面白い。
が、実施時期がとても暑い時期ととても寒い時期。あれだけ平均年齢の高そうな団体を安全に移動させるのは、すごい苦労だと思います。参加者に対しては、屋外での説明の場所や、給水の注意など手厚いものがありました。かわいそうだったのがバスガイドの人たち。こちらは動きやすく、温度調整のしやすい格好で参加しているからいいのですが、彼女たちは制服。しかも、近年は駐車中にエンジンをかけておけないと言うことで、我々が車外にいる間は、冷房を切らざるを得ないようで、ある年はガイドさんが熱中症で倒れてしまったくらい。
スクーリングで受けたのは「文化財学購読2」「文化財学演習1〜3」「歴史地理学」「文化財修復学」「仏教考古学」「美術史特殊講義」「日本史特殊講義」「奈良文化論」「神話伝承論」「考古学特殊講義」の12科目。みな面白かったのですが、やっぱり役に立ったのは「文化財学購読2」と「文化財学演習1〜3」。文化財学というものについてや、卒業論文についての話は本当に役に立ちました。早めに受けておいて良かった。中には、後回しにする人もいるようなんですが、他の科目のためにも役に立つ内容でした。
手を動かす授業もいくつもあり、拓本をとったり、膠と顔料で絵の具を作り絵を描いたり、仏像を梱包したり(これは学芸員のコースの授業でしたけど)、貴重な経験をしました。
入学した頃は、千田先生が学長でした。どこかの講演で奈良大を紹介するときに使った「学校のそばにコンビニはありませんが、遺跡は一杯あります」の言葉通り、高の原駅のすぐそばにはイオンのショッピングモールやコンビニコンビニ以外には大学近辺には何もなし。構内には生協のお店もあるし、学食もあるし、問題はないんですけどね。
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